絵画 販売 ギャルリー江夏  


技法解説


<版画>

 ジクレー
ジクレー(Giclee)とはフランス語で「噴出する」という意味である。紙やキャンバスに高精彩な専用インクを吹き付けて滑らかな諧調表現を得意とする。アイリス社製の高級機を使うことが多く、別名アイリスプリントと呼ばれる。原画の微妙なニュアンスがシルクスクリーンより、よりいっそう忠実に表現できると、この版画技法を選択する作家も多い。UVコーティングによる耐水と紫外線防止効果により、その作品保存性は高く、アメリカではここ最近、メジャーな版画技法として定着してきている。

 アクアチント
銅版画(凹版)の一技法で、アクア(aqua)は水、チント(tint)は色という意味である。水彩画のような銅版画が原義である。エッチングと違い点の集合によってグレーから黒まで濃淡の段階が表現される。磨いた銅版に松脂の粉末を散布して加熱すると、多孔質の版面ができる。その上に防腐剤で絵を描く。白く浮き上がらせたいところに防腐剤が塗られるので、腐蝕液につけたとき、その部分が描画となる。腐蝕・水洗いの工程を繰り返しながら、水彩画のような濃淡の陰影が生まれる。

 エッチング
銅版画(凹版)の一技法で、銅版の上に防腐のための蝋(ロウ)を塗り表皮膜を作り、その上にニードル等で描く。これを腐蝕液につけると、ひっかいたところが溝になる。この上にインクを塗りプレスすれば、印圧により、溝のインクが滲み出て紙に転写される。この技法は中世ヨーロッパ時代から続いてきたものであり、写真製版技術が登場するまで印刷媒体の中心となった。レンブラントはこのエッチングの大家である。

 エッチング + 手彩色
エッチングによる版画製版の後に、作家自身が手彩色によって手を加えたもの。これにより、版画であっても作品にオリジナリティが出てくる。

 ドライポイント
銅版画(凹版)の一技法で、銅版に直接刻みつける。この技法はビュランを用いるエングレーヴィング法と異なり、鋭い先のとがったニードル等で描く為、ニードル等で押しのけられた銅版のめくれが「ひげ、もしくはまくれ」と呼ばれるバー(burr)となり、エングレーヴィングのようなかわいた硬質な線とは対照的な、情感のあるやわらかい線の表情が得られる。この技法の歴史は1480年頃より始まり、デューラーも早い時期に手掛けている。エリューの美しい女性像はこのドライポイントの特徴が見事に生かされている。バー(burr)はすぐ消えてしまうので、限定部数の少ない版画に用いられる。

 ドライポイント + 手彩色
ドライポイントによる版画製版の後に、作家自身が手彩色によって手を加えたもの。これにより、版画であっても作品にオリジナリティが出てくる。

 メゾチント
銅版画(凹版)の一技法で、メゾ(mezzo)はイタリア語で中間、チント(tint)は色である。ロッカーやベルソーと呼ばれる工具を使い、細かい点状の網目を作り、これをスクレーパーやバーニッシャーと呼ばれる刀で削りとることにより、漆黒の画面から濃淡の陰影が美しい画像が浮かび上がる。これもドライポイントと同じく、同のまくれを利用したものです。フランス語ではマニエール・ノワール(maniere noir)とも呼ばれ、フランスで活躍した長谷川潔は、このメゾチントの名手と言われる。マリオ・アバティーもこの技法で多くの版画を手掛けている。

 エングレーヴィング(ビュラン)
銅版画(凹版)の一技法である。ドライポイントエッチングは銅版のまくれを利用したものだが、エングレーヴィングは銅版をビュランと呼ばれる彫刻刀で直接彫ることによってイメージを描く。この技法はルネッサンス期に開花したが、元来金銀細工師達が開発した技法である。ビュランは断面が鋭い三角形をしており、一線たりとも失敗の許されない、大変骨の折れる技法である。エッチングと比べるとシャープで奥行のある像が描き出される。

 リトグラフ
18世紀末、ドイツのアロイ・ゼネフェルダーが開発した平版の技法であり、古くはババリア地方で産出する多孔質の石灰石の板を利用して制作されていた。石灰石は水と油の両方をよく吸収する性質を持っている。この上に油性のクレヨンで描画し、さらにその上からアラビアゴム液を塗るとクレヨンで描いたところは水を弾き、油を引きつける。この版面を水で濡らした後、油性のインクをつけたローラーを転がすと、インクはクレヨンで描かれたところだけに付く。このような工程を色の三原色の原理にもとづいて重ねあわせていく。この工程をProgression of color platesという。最近では石灰石の代わりに取り扱いの易しい亜鉛版を使うことが多い。フランスのムルロー工房はこの技法により、多くの巨匠たちのリトグラフによる版画を世に送り出したことで有名である。

 リトポスター
印刷方法がリトグラフと同じポスターである。

 コロタイプ
写真製版法の一種で、その語源はギリシャ語のKolla(膠<にかわ>)から来ている。1870年代、フランスに住むドイツ人アルベルトによって実用化された技法である。ガラス板に感光剤を塗布し、乾燥させるとしわ状のゼラチン膜ができる。一方焼き付ける写真はネガを用い、この上に置いて露光する。これを水で洗うと感光の程度によって硬度が異なり、水を吸ってふくれる度合いも違う。このチリメンじわを基礎として画像ができている。これをコロタイプ印刷機にかけて印刷する。日本では1989年頃から知られ、学校の卒業アルバムなどの印刷に用いられたり、絵画の複写に用いられた。オフセット印刷のような網点がなく、版画集など少数部数印刷に適している。

 シルクスクリーン(セリグラフ)
シルクスクリーンは絹(seri)に描く(graph)、即ちセリグラフとも呼ばれる孔版印刷の一種である。絹やテトロン、ナイロン等の合成繊維を版材として用い、感光剤を塗り、暗室で乾燥する。その版上に写真などを貼り付けて感光し、水洗い後に感光していない部分が水によってはがれることで孔版になる。感光していない部分はスキージというヘラを使い、インクを押し出す役目を果たす。この作業を色数分だけ行う。優れた工房から刷り出されるものは百数十の版を使って非常に豊かな色数の表現を可能にし、熟練した手腕によるシルクスクリーンの美しい諧調は現代的な作品に最も適する技法と言える。

 木版画
版画の中で最も古い技法であり、凸版として知られる技法である。日本においても浮世絵などに用いられている。木目に従ってカットした板を使う。18世紀の末葉、Bewickが木口木版を考案した。これはツゲの木口の小片を彫刻銅版画を彫るビュランで彫るものであった。さらにこの小片を組み合わせて大きな板にすることにより、極めて精巧な像を刻むことができるようになり、写真印刷の前段階として盛んに用いられた。特にフランスのギュスターヴ・ドレの版画集は一世を風靡した。日本では小林清親がしばしば木口木版を併用した。

 ヘリオグラヴュール(フォトグラヴュール)
写真を大量に複製するための写真製版法の一種で、フォトグラヴュール、写真グラビアとも呼ばれる。1879年チェコ人、カール・クリッチによって考案された。レジン(松脂)の粉末を散布し、熱して付着させた銅版にポジ画像を焼き付けて、カーボンティシューに転写する。これを処理して耐腐蝕膜(レジスト)ができる。レジストの厚い部分は浅く、薄い部分は深く腐蝕され凹版が出来上がる。この上にインクをのせると、凹部の深浅により連続諧調の像が得られる。19世紀末葉にはスティーグリッツをはじめ、多くの写真家がこの技法を用いた。

 ポショワール
pochoir(ポショワール)はフランス語で、英語ではstencil(ステンシル)となる。インクをのせるところだけを切り抜きで筆で彩色する。いわゆる河童版のことで、大変手間とコストがかかる印刷技術である。この技法を用いたことで有名な人物はフランスのモードファッション界で活躍したポール・ポワレがいる。今までチラシの域を出なかったカタログに、ベタっとした感じではあるが、鮮やかな色彩とモダンなイメージで成功を収めた。

 モノプリント
ガラスや金属板に直接インクや絵の具で描画し、これに紙をあててプレスする版画で、一枚しか制作されないからモノプリントと言われる。ドガやシャガールがこの技法をよく使った。版画というよりオリジナルに近い技法であり、シャガール等のモノプリントは希少性のため極めて高価である。

<肉筆・原画>

 油彩
油絵の具とそれを薄めるワニスを用いてキャンバス又はボード(板)に直接描画する技法。色調や色の濃淡が容易に得られるし、線描も出来る。薄塗、厚塗、光沢、半光沢など、自在に表現でき、乾いたのちの色の変化も少なく優れた技法である。15世紀のフランドルのヴァン・アイク兄弟がこの技法で高い芸術完成度を示した後、16世紀のイタリアルネッサンス時代に花開いた。17世紀に入るとフランドルのリュ―ベンスがこの技法で華やかな作品群を産み出し、同時代のオランダのレンブラントも重厚な深みのある作品を制作した。その後各種の添加物により、新たな材質感を創案することになり、19世紀の印象派によって最も表現力に富む絵画技法のひとつとして、今日まで愛好され続けている。

 アクリル
アクリルは水彩絵の具とちがって乾くと耐水性になる。これを原料としてアクリルガッシュという絵の具で描く技法。樹脂絵の具であり、優れている点は水で絵の具を溶いて、油絵のように描け、軽くて明るい現代的な感触がある。

 グワッシュ
不透明性水彩絵の具による技法。水分の調節により、はっきりした色からにじんだ色まで多くの諧調で描ける。色の濃淡のコントラストによって生き生きとした動きを表現できる。ワイズバッシュのドンキホーテや音楽家シリーズ等はグワッシュで描かれた名品が多い。

 パステル
パステルは淡く柔らかな色を表現すると同時に、鮮やかで力強い発色性にも特徴がある。外形性状も一見色チョークに似た棒状固形絵の具で、重ね塗り、ぼかしなど多彩な表現ができるが、定着性がないために粉がこぼれやすい。従って描き終わったあとにfixativeというものを使って粉がこぼれないよう定着性を高める。オディロン・ルドン、ドガ等このパステル画によって多くの名作を描いた。

 岩彩
日本画に使われている顔料は岩彩と呼ばれており、天然の岩石をくだいて、粉にして使う。岩絵の具をお皿にのせ、膠水(にかわすい)を混ぜ、指でよくなで、さらに水を加えて濃度を調節して出来上がる。粒子が細かいほど薄い色が出せる。日本や中国で使われており、生命の持つ石の美しさが岩彩の魅力であり、みずみずしい色が変退色しないで長持ちするという特徴がある。

 水彩
水彩画のaquarelleのaquaはラテン語で水。英語でwater color。水彩絵の具を用いた技法であり、と水のバランスによって画面に緊張感とメリハリが出てくる。深描による描き込みや、点描、ハッチングによる描写が生き生きとした効果を生みやすい。

 水墨画
墨の濃淡や流れのみをもって表現する技法。墨書と同じくらい古い歴史があり、日本には文人画として、中国より渡来した。南宗画系と北宗画系に二分され、江戸中期、日本にこの南宗画が入ってくると、当時の文人墨客は好んでこの技法を学んだ。

 素描
デッサンのこと。英語ではドローイング。往年の巨匠は全てデッサンに秀で、達人はレオナルド・ダ・ヴィンチ、デュラー、ドガ、ロートレック等、デッサンだけで名作と呼ばれる作品が多い。

<ポスター>

 ポスター
印刷コストを考えると、とてもリーズナブルな技法。ポスター用の高機能プリンターを使用することによって、版画等と比較するとはるかに快速に印刷することができる。最新式の機械になると、染料系インクだけではなく、顔料系インクにも対応し、その表現能力・耐久性はますます高いものとなっている。


Copyright(c) 2002 Galerie Enatsu Co.,Ltd. All Rights Reserved