伊藤画伯の作品は日本古来の伝統的な日本画や工芸の技術を巧みに用いながらも、これまでとは異なる新しい表現がされていると思われますが、現在の制作スタイルに至った経緯、また、創作する上での伝統技法との関わりについて教えて下さい。
経緯としましては―――
大学は油絵科で入学して、大学院は版画科で出ていますし、広告代理店時代はアートディレクターとデザイナーの仕事をしていました。
広告制作での経験は、日本文化に関心を持つ大きなきっかけになりました。それは何より、日本人による日本人のための、日本の商業美術であったからです。日本人でありながら、自明のものとして、実は日本を知らない自分。仕事
の合間を縫って茶道を習ったり美術館に通ったり、本を読んだりしました。
風土や生活に根ざしたデザインには必然性があり、生きた造形として人の社会に役立つ。日本画というものも、そういう中で育まれた日本独自のデザインの一つと認識しました。
ここで私の中にある画家魂に火が付いたのです。「前衛芸術」などと言って、社会性のまったくない訳のわからないものには辟易していましたので、ようやく地に足の着いた手法が見つかった気がしました。そこから私の日本画探求、そして自分探しの旅が始まったわけです。そんな経緯からも、私の作品は色々な要素がミックスされた表現になっているのかなと思います。
まだ途上です。これからやらなければいけない事だらけです。
長徳寺蔵(仏涅槃図)182.5×135cm