カリフォルニア州シーサイド----マッケンジー・ソープの青年時代はいかなる人生の希望も成功の見込みも無さそうだった。10代としては余りに将来が絶望的だったので、薬物の過剰摂取で自殺しようとさえした。
だが、不屈の魂のお蔭で、この英国人アーティストは、アートの世界で非凡な存在となった。ひどい学習障害、不毛の子供時代、ほとんど何も才能を磨いてくれるものも無かったにも拘らず。
この44歳の芸術家は、最近シーサイドのチャートウェル・スクールでクラスで生徒たちに語っている。「僕に出来ることは、描くことだけだった。そして(誰もが思っていたけど)描くことは何の役にも立たないことだった。」
ブルージーンズに真新しい白のTシャツを着た白髪混じりのソープは、少年達に描き続けること、決して夢を諦めないことを力説する。その時、瞳はきらきらと輝く。己の耐えている診断未確定の失読症による、肉体的且つ精神的な痛みを少年達に隠さない。
ソープ―彼の作品は、現在世界中の何百というギャラリーに収められ、近年では英国の ベストセラー・アーティストとして認められている。 彼の芸術に対して反響を寄せるのは、エルトン・ジョンやアン王女のような有名なコレクターにだけに留まらない。一般の人々も、ソープの風変わりな作品、どこか子供っぽさのある印象の中に、希望や闘いを見る。
ソープの非凡な人生それ自体が、チャートウェル・スクールの少年達にとってひとつの教訓だった。この学校は、学習障害があったり、その恐れがある生徒のためのものである。多少の美術を学んだり、しかるべき方法にのっとって、絵画が何を象徴しているかを学習するのだ。
「僕は、何かを元に戻すのが好きなんですよ。」とソープは語る。彼は、はっきりものを言う。「僕はちょっとカリフォルニアに来たという訳ではありません。お金を稼いで、故郷に戻ります。」
チャートウェル・スクールは、北ヨークシャーの我が家に帰る前の最終地点だった。ソープは、カリフォルニア中を慌しく旅した-サンフランシスコ自殺防止センターや、シーサイドのマンザニータ・スクールのコミュニティー・パートナーシップで働きながら-それに、カーメルのハンソン・ギャラリーで彼の歓迎レセプションに出席したりもした。彼は妻とティーン・エイジャーのふたりの子供達 のところへ戻ることを切望していた。そのことを快く認めた。
だが、子供達を救うこと-どういう方法であろうと、場所がどこであろうと-は自分の責任だと感じている。
深刻な障害
その責任は、チャートウェル・スクールで果たした。生徒達に、自分の少年時代や克服せねばならなかった辛い障害を語ることで。
「僕は、試験で座っていられなかったんだ。 かろうじて読み書きが出来るだけだった。」と、ソープは言う。「先生達は、毎日僕を叩きのめした。向こうはぶつ、こっちはモラす。ほんとに恐怖でした。」
ソープに出来たのは、描くことだけだった。だが、誰もそれを評価してくれなかった。励ましてくれた唯一の身内は、叔父だけだった。この叔父は、ソープをいじめから守ってもくれた。
子供のときは、いつも絵を描いて過ごした。普通の紙に描くという贅沢をするお金が無い時は、煙草の箱の紙にすら描いた。
15歳の時、唯一見つけた仕事-造船所の作業員-を始めた。しかし、この仕事は続かなかった。自殺を図ったのは、17歳の時だった。
ある友人が美術学校に行くことを勧めたのは、この混乱と絶望の時期のことである。が、それはまるで、月に行くのと同じようなものだった。
ソープは、「僕の入学願書は、酷い代物でした。綴りは全部間違ってるし、小論文が書けないことは明々白々で。」と、間もなく出版される著書『心をこめて』で書いている。 「でも、ものすごい数の絵を、正確に描いたんです。」
才能は障害に勝る
ソープの真価は、地方の美術学校--数年をそこで過ごしたのだが-そして、ロンドンのバイアム・ショー・スクールで認められる。
美術学校で新たな自信がつき、可能性の世界に目覚めたが、この手の成功には長らく縁が無かった。彼は、描きに描いた。画材屋が開いている間は。10年程前、作品のひとつが25ポンドで売れた。そして、また少し売れた。更にまた、少し。現在、彼の作品のひとつには、25,000ドルの値がついている。
ソープは言う。「ここに来るまで、44年かかりました。僕がすることを支持してくれる人が出来たというところまで来るのに。」
「僕は、あらゆることが可能だということを証明する、生き証人です。」
しかし、彼は生徒達に言う。それは、たゆまぬ努力と夢を追い続ける情熱.がもたらすものだと。ソープは、とにかく描き続けろと力説する。
彼にとっては、ローレンス叔父さんのような人達が、希望と絶望の違いを知る手助けをしてくれるのだ。.
ローレンス叔父-当時、身内の中で唯一仕事を持っていたのだが?は、ソープが美術学校に通うのに必要な物を買ってくれた。費用はおよそ20ドル。ソープにとって、それは世界だった。
「子供たちは皆、自分を受け入れてくれる人を必要としています。」と、ソープは言う。「犬でさえそうです。自分の人生に関わってくれる誰かが必要なんです。」
マッケンジー・ソープ
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海外における記事紹介
英国人アーティスト、マッケンジー・ソープが、カリフォルニア州シーサイドで障害のある生徒達と言葉を交わす。ソープ自身も読み書きが困難だが、一生懸命勉強し、自分の夢をかなえるんだと子供達に熱く語りかける。